GOLDEN TWILIGHT
Tkanosuke Yasui

壁画 NO.3「GOLDEN TWILIGHT | 黎明」

Artist:Takanosuke Yasui / 安井鷹之介
Size:高さ7.5m×幅10.2m
Date:2023年
Material:関西ペイント塗料

CONCEPT

今作については、この壁画制作の一年前の2022 年、初めての壁画完成披露会の時に話は遡ります。セレモニーの時に私は浜に住むおじいさんから、その土地で自らが手積みして自作してくださったブーケをプレゼントしていただきました。それまでの数年間のプロジェクト準備期間もちろん良いことばかりではなく、時としてムラ社会特有の空気感を体感することもありましたが、そのブーケはそんな内と外の垣根を軽々と突破して強烈な喜びを私に与えてくれました。

私はそれに、生の土地を分け与えていただいたかのような衝撃さえ感じました。そしてその時から、近年の都会ではなかなかお目にかかることのできない、この町で毎日のように目にするお裾分けをしあう近所付き合いや隣人とのコミュニティにより強く着目するようになりました。夜明け前から働きに出て、海や畑での収穫物をお昼に持ち帰り、それを共有する。時間やエネルギーが物に形を変えて他者の身体に直接届いて関わっていく。都会に見られる過度な消費社会が発するスピード感に対して、この町にはまだ太古から続いているであろう悠久な循環が残っている。そう感じています。

壁画1 “THEORIA” では風景画を描き、壁画2 “A Fisherman” では人物画を描いてきました。ですので、今作の壁画3では静物画を描きたいなと前々からぼんやりと考えていました。
そして静物画について調べていくとその起源は、イタリア・ポンペイの壁画にあるとわかりました。
その壁画はなんと、客人を迎え入れる部屋の壁に描かれるフルーツや魚などの贈り物についての絵が描かれた壁のことを指していました。今回私は” ブーケ” の経験からこれまで私がたくさんの住民の方々に頂いてきたモノを構成して静物画の壁画を描きましたが、実はそこには美しすぎる因果の裏付けがありました。また、滞在中にはたくさんの方から様々なお話しを伺います。

その中でもこの土地に関わる歴史の話は大変興味深いテーマが多くありました。そのようにして伺った、この地方にも多く存在した潜伏キリシタンの歴史や、西南戦争で負けた薩摩軍が雄勝石を掘削する石工として働いていたという史実についても、モチーフに絡めて描かせていただきました。例えば、薩摩郡はさつまいも、キリシタンについては雄勝町にも深く関係する支倉常長の衣装の刺繍のススキを抜粋し絵の中に登場させました。という具合に、他にもいくつかのモチーフに意味を絡めながら描いていますので、ぜひ探してみてください。

この壁画はプロジェクト2期目に制作しましたが、昨年からの1年間で感じたことがあります。それは「此処での制作が纏う時間は、長い芸術史、ひいては人類史の時間軸と共にある」そんな規模の仕事だということ。
現代的なスピード感覚とは対照的なそれに、私は芸術家として救われているという自負さえあります。これからも真摯に土地と歴史に向き合いながら、じっくり作品を此処に土着させることに集中し制作を続けていきたいと考えています。

まだまだ始まったばかり、期は黄金色に輝きだした黎明です。

絞り込み

    GOLDEN TWILIGHT | 黎明

    2023年に制作された、美術館3作目の壁画作品。高さ7.5m、幅10.2mの壁画「GOLDEN TWILIGHT(黎明)」


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    Artist

    安井 鷹之介

    愛知県出身
    東京藝術大学彫刻科卒業
    MAHO KUBOTA GALLERY所属

    大学在籍時、ミケランジェロやロダンなど古典から近代までの彫刻を学び、一方で主に欧米の現代アートの潮流に触れる。石膏と布で造形した彫刻で注目を集め、このオリジナルな手法を用い独特のボリューム感を持つペインティングも制作する。日本人離れしたセンスと現代的で開かれた表現が幅広い層の共感を呼んでいる。
    Wall holder gallery

    カベ主ギャラリー

    壁画No.2「A FISHERMAN」の作品を制作するために、さまざまな方にカベ主になっていただきました。こちらの別サイトにのみなさまのカベ主名を掲載しています。

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